キュリオ第7話


上げます。





同時刻、ミキティは都内の稽古場で「リボンの騎士」のレッスンの真っ最中だった。
ミュージカルのレッスンは厳しく、ライブで鍛えられた娘。たちも汗だくだった。
歌や演技だけでなく、最も基本的な発声や姿勢の保持に至るまで、要求されるレベルは高く、一時も気が抜けない。
レッスンといえども、真剣そのもの。
それはメンバーにとって充実した期間に違いないが、そのぶん休憩時間を楽しみにするのも「女の子」というものだ。


この日も、休憩が告げられると6期メンバーの3人は、さっそく自分たちの私物を囲んで集まった。
「れいな、そろそろはっきりさせましょう」
田中れいなは、こういうときの道重さゆみの笑顔が、かえって怖いことを、よーく知っていた。
「わたしと絵里とどっちを選ぶの?」
「…藤本さんっ、助けてくださいよ〜!」
ただならぬ雰囲気を察し、近くにいたミキティの背中に隠れた。
見ると二人ともが、手にクッキーを持っている。
手作りのようだ。
「大丈夫なのに、、、毒は入ってないから」
さゆのつぶやきに、ミキティも釣り込まれて笑ってしまう。


一気になごやかになった稽古場の片隅では、習ったばかりの動きを反復する姿もある。
「小川さん、今の動きって、こうです?」
「小春ちゃん、それ逆だから。…いや、そうじゃなくって、逆。あ、そうじゃなくって」
「え?え?え?」
先輩の小川麻琴に尋ねていたのは、7期メンバーの久住小春
成長著しい彼女も、モーニング娘。に加入してから、もう一年になるが、相変わらずの元気印の最年少っぷりを発揮していた。
「えっと…、あ、わかりました!こうですね」
自信満々な感じで大きく踏み出した瞬間、小春は何かにつまづきそうになって、ブシって音がしそうなくらい転んだ。
「大丈夫?!」
「ちょっと、どうしたの?!」
「すっごい音したよ!」
「小春、痛くない?」
その場にいるみんなが駆け寄った。
「あ、大丈夫です!」
いつもと変わらない小春の声に、全員が胸をなでおろす。
近くで同じように休憩返上で個人練習をしていた高橋愛が、手を貸した。
「立てる?」
「ハイ。今のなんだったんですか?」
「さあ?猫じゃない」
「ああ、猫。…って、こんなところにですか?!」
その会話を聞いたミキティが、独り言をつぶやいた。
「猫…」
「藤本さん、どうしたんですか?」
何だろう。脳裏に何かひっかかるものがあった。
そのとき、突然、新垣里沙の大きな声が稽古場に響いた。
「わ、ちょっと〜!誰〜?!ネコちゃんを連れてきたのは!」


つづけ…