第13話

2007.5.22



第二部(セカンド・シーズン)に入りました「Curiosity BOX」(キュリオースティ ボックス)
完結を目指し、更新いたします。





逃がしちゃダメだ
今度こそ…


ミキティは一つ頭を振ると、すぐさま刑事を追った。
頭の中では、ひとつの言葉がずっと巡っていた。
それは、最近聞いたのではない。
ずっと以前
そう、あれはモーニング娘。に入ったばかりの彼女に発せられた言葉だった。
「ごめんね、気付いてあげられなかった。あなたの能力があんまりにも高いものだから」
ソロとして順調に歌手活動をスタートさせていた彼女にとっても、モーニング娘。は勝手が違った。
歌やダンスは覚えれば何とかなったが、ポジションに番号が振られたフォーメーションというものは、初めてに近い経験だった。
わからないことがあって当然なのに、新人ではないがゆえにやっぱりどこかで無理をしてしまった当時の自分。
(わたしは、6期メンバーだけど新人じゃないんだから)
そんな悩みに気づいてくれたのも、やっぱりメンバーだった。。。



「あっ、亀ちゃん!大丈夫?ねえ!大丈夫?」
紺野が呼ぶ声に、それまで気を失っていた絵里はようやく目を覚ました。
紺ちゃん…。あれぇ?藤本さんは」
「えっ?」
「わたし、大丈夫ですよ。あれ?刑事さんも、どっか行っちゃいましたね」
「美貴ちゃん、また追いかけて…まさか、ね」
紺ちゃん!きっと、そうです。藤本さん、あの刑事さんを追っかけてったんですよ!」
「え?何で、今さら」
紺ちゃんのためですよ」
「美貴ちゃんが…?」
「失礼なこと言いますよ。でも、わかってないのは紺ちゃんの方です。藤本さん、ここに来る前から大マジでしたから」
キュリオについて詳しく知りたいと言ったミキティは、突然、絵里の前で頭を下げ、教えてほしいと頼んだのだという。
「そんな!それじゃあ美貴ちゃんは今頃、、、」



ミキティは、暗い構内を走っていた。
息を切らせて走っていた。
当時の自分の悩みに気づいてくれたメンバーは、こう言っていたのだ。
「でも逆に安心した。あなたも迷ったりするんだって」
「どうしてわかったの?わたし、そんな顔してた?」
「わかるわよ。わたしたち、仲間なんだから」
そんな自分が、次期リーダーになるのだという。
「だから逃がしちゃダメなの、ゼッタイに!」
ミキティは走り続けた。
走りに走った。
もう、これほどまで必死に走ったことはないというくらい。
そして気がついたら、
あの台湾から来たという刑事が、そこにいた。。。


つづけ…