キュリオ第10話


前回、第9話更新から気づけば「Curiosity BOX」(キュリオースティ ボックス)は、1ヶ月ぶり更新になっていました。
ストーリーは最終話まで出来上がっているのですが、更新が遅れ、申し訳なく思っています。
お詫びに、第5話でも行ったように「これまでのあらすじ」をつけますので、ご覧ください。

これまでのあらすじ

台湾から来たという刑事を尾行する紺野あさ美藤本美貴
追い詰めたと思ったロン刑事は、とある地下鉄駅で、文字通り姿を消した。
その翌日、今度は吉澤ひとみ接触してきたロン刑事を発見し、藤本は追うが、またしても姿を見失う。
その中で自分たちを「狙っていた」というのが亀井絵里だったということが判明したが、今度はロン刑事が発したという謎の言葉「きゅりお」が残された。
卒業を控えた紺野の周囲でも、気になることが次々と起こっていた。
交差点で出会った少女からは「モーニング娘。を辞めないで」とまっすぐな気持ちを突きつけられ、同期の高橋愛も言葉にはしないが、沈みこんでいた。
悩みが深まったとき紺野のもとに届いたメールは、ロン刑事からのものだった。。。

第6話は、こちら
第7話は、こちら
第8話は、こちら
第9話は、こちら
そして第5話以前については、こちらにまとめています。合わせてお読みください。


それでは、以下に第10話を更新します。どうぞ!





地下鉄駅で、突然、消えた刑事。
メール本文は謎めいた内容だったが、紺野にはすぐわかった。
あの駅で会いたいと言っているのだ。
「やっぱり吉澤さんには、知らせたほうが…」
リーダーに余計な心配をかけさせたくないというミキティの気持ちはわかるが、隠し事を重ねることに、紺野は罪悪感を感じていた。


楽屋に足を向けたが、吉澤の姿は見えなかった。
ちょうど、後輩の久住小春田中れいなが並んで通りかかったので、紺野は二人を呼び止めて聞いてみた。
「あー、吉澤さんならいませんよ」
「え、いない?」
「ホラ、れいなが言うとったのに。なんか怪しいって」
「吉澤さんが?」
ポンちゃんは、気づきませんでした?最近は、藤本さんもちょっと」
「美貴ちゃん?」
「『リボンの騎士』のレッスンじゃ、休憩中にいきなり飛び出して行ったり…」
「あのー紺野さん、田中さん」
「なん?小春」
「急がないと、次のスタジオ」
「ああっ!」


スタジオには既に吉澤もミキティも入っていた。
カメリハが終わり、本番前のランスルーが行われる予定になっていた。
紺野はそこでNGを連発した。
「どうした?」
メンバーが気遣って、声をかけてくれた。
「普段だったら絶対しないようなミスばっかだったけど、大丈夫だよ…ね」
わたしのことで、また心配をかけている
高橋愛の声を聞いて、涙があふれそうになった。
「ちょっと、大丈夫なの?!あさ美ちゃん」
「何でもない。大丈夫だから」
「ホントに?」
「うん。…あれ?わたし、忘れ物」
「もう!しっかりしてよ」
やっと笑顔になった高橋愛をその場に残して、紺野はその場から離れると、どこへともなく走り出していた。
頭の中が、ぐちゃぐちゃだった。
何もかも時間が足りなかった。


わたし、、、こんな気持ちで卒業していいの?


この思いが、紺野の心を不安定にしていた。
「こんこん!待ってってば」
よく通るミキティの声がした。
走って追いかけてきてくれたようだった。
「何があったの?」
そばにあるベンチを勧めながら、ミキティがやさしく問いかけた。
紺野はスタジオに入る前にあった出来事を、できるだけ詳しく話した。
ミキティはそれを最後までじっと聞いてから言った。
「代わりにわたしが行こうか」
「だって、この日グッドウィルカップの日だよ。美貴ちゃんたちは『リボン』のリハーサルじゃあ」
「わたしはいいの。だって魔女だからね」
「美貴ちゃん…」
「それより、こんこんはどうしたいの?」
「わたし、、、」
気持ちはまとまってなかったが、それだけは迷いなく言えそうだった。


もう、逃げたくない


「行く」
「怖くない?」
「それは怖いけど…ねえ、やっぱ美貴ちゃん、一緒に来てくれる?」
「そう言うと思った。いいよ」
寄り添う二人は笑い合った。


つづけ…