キュリオ第6話


ひと月ほど間隔が開き、連載している「Curiosity BOX」のプロットもそれなりに固まってきました。
ようやくエンディングが決まり、予定では20話前後で完結できそうです。
始めたときは一話先のことも定まっておらず、正直なところ、その都度つじつまを合わせていくのが大変だったので、取り敢えずですが、ホッとしています。
とは言いながら、先のことはわかりませんが。
まだまだ序盤で、物語が本格的に動いている感じではありませんが、気長にお付き合いいただければ幸いです。


それでは第6話を、どうぞ。





夜明け前に帰宅した紺野は、ベッドには入ったものの、結局よく眠れないまま朝を迎え、、、それが災いした。
翌日、完全に寝坊したのだ。
「どうしよ。遅刻しちゃう!」
半分泣き出しそうになりながら、超スピードでシャワーを浴びて、
前髪中心にドライをしてから、必死にヘアアイロンをかけて、
記録的な速さで朝食を摂りながら、夕食は何かと尋ねて、
アイブロウ&ビューラー両手使い時短メイクにして、
荷物を確認してから、お昼のお弁当を3段詰めて、
あわただしく、朝の行事をこなしていった。


そして、いよいよ出かけるべく玄関に向かうと、
「このドアが、どこでもドアだったら…」
と、日本人なら誰もが考える無意味な妄想を振り切り、ダッシュで予備校に向かった。
紺野には、こんなときにだけ通る「第二の通学路」がある。
ふだんは寄り道大好きな紺野だが、今は1分1秒を争う。
工事現場のシートをくぐり、歩道の柵をハードルのように飛び越え、
輝く夏の光の中、息の続く限り疾走した。


「なんとか間に合う…かも」
赤信号を守っている間に、頭の中で時間の計算をした。
この調子で行けば、最速タイムが出せるかもしれない。
木陰という名のオアシスでそんなことを考えていると、突然、背中に衝撃を感じた。
「えっ、な、なに?!」
後ろから、誰か、ぶつかってきた?
倒れはしなかったが、立ち止まっていた自分にぶつかってきたことに気が動転してしまい、咄嗟に顔を隠す。
しかし、少し間があいたのに、反応はなかった。
前髪の隙間からおそるおそるのぞいてみると、紺野の足下に、小学生のように見える少女が座り込んでいた。
「どなたかわかりませんが、すみません」
彼女が落とした白い杖に、気づいた。
自分の足下を見た紺野は、愕然とした。
木陰に立っていた自分の足下には、黄色の点字ブロックが続いていた。
杖を拾って手渡してやりながら
「ごめんなさい」
と、心から謝った。
軽率な自分の行動を悔いていた。
「こんこん?!」
「え?」
「その声…、こないだラジオに出てたでしょ!」
紺野は王様ラジオキッズのことかしらと思いながら、ためらいがちに返事した。
「そう」
「やっぱり!」
紺野の正面に立ち上がった少女は、真っ直ぐに顔を向けると、こう言った。
「お願い!モーニング娘。を辞めないで」


信号は、すでに青色から、また再び点滅を始めていた。


つづけ…