こんこん2


なにやら始めてしまった連載です。
本日の更新のついでにUPします。





それまで主導権を取られていた形となっていた刑事が、ようやく口を開いた。
いつの間にか靴も靴下も脱いで、裸足である。
「よし。じゃあ、賭けよう。私が勝ったら、言うとおり動いてもらうぞ」
「じゃあ、こっちが勝ったら、こんこんどうする」
「食べ放題がいいなあ」
この回答に、さすがのミキティも何か言いたげな顔になったとき、後方から足音がした。
一人の少女がこっちに走ってきていた。
「藤本さーん!紺ちゃーん!…ハア、ハア、よかった…間に合った」
「なんで、ここがわかったの?」
「何しに来たの?!」
二人から同時に質問を投げかけられたのも、無理はなかった。
そこに現れたのが意外な人物、亀井絵里だったからだ。
誰にも内緒のつもりで抜けだしたつもりの二人だったが、油断していた。
まさか絵里が、これほど鋭いとは。


「いいんですよ、それは…」
絵里は、いきなり二人の質問を遮った。
そうして、相変わらず強引な展開で話を進めた。
「それより、何でこんなところで刑事さんとサッカーなんかしてるんですか」
刑事は、かなり神経質にボールを置く位置を調節していた。
PK勝負に入った二人を邪魔しないように、ミキティが代わりに答えた。
「メールで呼び出されたのよ」
そして刑事に背を向けると、絵里だけに聞こえる声で、すばやく付け足した。
「狙われてたのはあんたじゃなくって、こんこんだった」
絵里の瞳が大きく見開かれた。
「ウソ?!」
ミキティはものすごく怖い顔をして、これから始まる勝負の行方を見守っていた。
何も答えてもらえない絵里の心配が、一秒ごとに高まってきた。
紺ちゃん!」
紺野が振り返った。
絵里が今にも泣き出しそうな顔をしている。
紺野は笑顔を返した。
その瞳が「だいじょうぶ」と言っていた。
もう、この場に駆けつけた絵里も、黙って見届けるしかなかった。
誰も、この勝負は止められそうになかった。


つづけ…



今までの「おじゃまるしぇに恋して。」を読んでいただいていないと、こう言っても通じないと思いますが、
この連載は、これまでぼくが書いてきたものとは、少し違った毛色になっています。
これまで、ぼくは物語を一人称で書いてきました。

やっとのことで、ぼくは彼女と口をきくことができた。

とか、

ゴメン、わたし。そんなに強くないの…

といった具合です。

ぼくは、もう、この文体を壊して、新しいものが書けないかと思っています。
また、今まで書いた物語のような一話完結ではありません。
雰囲気も、今回はミステリアスな部分を取り入れています。
とにかく破綻しないように、エンディングまでたどり着きたいと思っています。
そういう意味でタイトロープ小説なんですが、よろしくお願いします。