キュリオ第5話

2007.2.18



「Curiosity BOX」(キュリオースティ ボックス)を再開します。
これは何かと申しますと、簡単に言うと、ぼくがここで連載している、紺ちゃんを主人公にした小説(のようなもの)です。
始めたきっかけは「カントリー娘。のViva!Futsal」で、みうなが書いていた記事。
懐かしい引用になりますが、

皆さん、こんにちは。
いよいよ始まりますね。トヨタカップ!!
なのに私の手元にはまだチケットがない・・・。でもどうしても行きたい!!
昨日、夢にまで見てしまいました。
それは、今は受験勉強中の元ガッタスメンバーのこんこん(紺野あさ美)から、なぜか電話がかかってきて「バルサ戦のチケット2枚とれたんだけど一緒に行かない?」と誘われる夢。

というもの。
詳しい経緯については、昨年12月7日の記事、コメント欄を参照してください。


で、前回から一ヶ月以上、間隔が空いてしまいましたので、中には「アレは、どーなったの?もう終わりなの?」って思ってらした方もおられると思います。お詫びに、これまでのあらすじも付けておきますね。

これまでのあらすじ

都内にある、無人の地下鉄駅で、今、まさにPK勝負が行われようとしていた…
壁に赤いスプレーペンキで引かれただけのゴールマウスを守るのは、紺野あさ美
台湾から来たという刑事との、この勝負に勝てなければ、彼の言うとおりに動くという賭けが、まさに始まろうとしていた。
その瞬間に飛び込んできた亀井絵里
けれども、誰にもこの勝負は止められそうになかった。
刑事との対決に至ったわけは、紺野と一緒にいた藤本美貴にも大いに関わりがあったのだ。。。


第1話は、こちら
第2話は、こちら
第3話は、こちら
そして第4話は、こちらです。合わせてお読みください。


それでは、第5話を以下にUPします。どうぞ!







鞄から紺野は帽子、そしてミキティはサングラスを取り出した
ある意味、アイドルは変装の名人である。
ミキティのサングラスはかけたときの違和感がなく、印象もガラリと変わる逸品である。
紺野は深めに被れる、ツバのある帽子を愛用しており、さらに薄手の上着リバーシブルにもなっていた。
さらには二人ともが、ヒールの部分が取り外せる特注品を履いていた。


「美貴ちゃん、いたよ!」
「シッ!…ここから慎重に行こう」
今のところ、ターゲットにはまったく警戒の様子がないが、人混みのないところで行う尾行は、その成功確率も驚くほど低い。
二人はターゲットと等間隔の距離を置いて、ときには横道に入りながら、連絡を取り合って尾行を続けた。
繁華街での尾行と違い、相手を見失う心配はなかったが、気づかれやすいため、距離を十分に開けて追尾する。


ビルの谷間から見える星は、頼りなく光っていた。
眠らない都市を泳ぐ熱帯魚のように徒歩のスピードを緩めることなく、ある地下鉄駅までたどり着いた。
「こんな時間に?終電はとっくに終わってるよ」
入り口は始発まで閉鎖されている。
しかしながら、その上部には人が通れるくらいの隙間が空いていた。
見上げると高さはかなりのものだったが、台湾から来たという刑事は驚くべき身軽さで、それをひらりと飛び越えた。
そこまで跡を追ってきた二人は、互いの意志を確認するようにチラリと視線を合わせると、一呼吸おいてから、迷うことなくそれにならった。


高層ビルの影に切り取られた空が、白み始めた頃、
再び、同じ出口を乗り越えて彼女たちが姿を現した。
「おかしいなあ。始発はまだだって言うのに」
二人は駅構内をくまなく捜したのだったが、ロンという名の刑事のことをすっかり見失ってしまったのだ。
「そうだね。まるで…」
「まるで、何?こんこん」
「消えちゃったみたい、、、」
一羽の鴉(カラス)が、黒々とした羽根を広げ、けたたましく鳴いた。
空が明るくなって来るのに反比例して、ミキティの心が何か、その何かはわからないが暗いモノに捕らわれていくように思えた。
そんな自分自身を現実に引き留めておくかのように、携帯を開き、時間を確認した。
「わたし、今日はリボンの騎士。レッスンがあるんだ。こんこんは予備校?」
「うん。午後からだけどね」
足を動かすことで、そして友人と話すことで、不安感は少し和らいだようだ。
橋の上は、夜明け前の風が心地よかった。
「こんこん、受験、ゼッタイがんばってね!」
「ありがとう」
そのまま、二人は橋の上で別れた。
だから知らない。
二人のことを橋の向こう側から見ている、少女の姿があったのを。


つづけ…