紺野あさ美ver.morning musume


今のわたしの部屋にあるこの貯金箱は、メンバーからのおみやげだ。
わたし宛てに届いたのだが、海外製だというデザインがかわいいなと思いつつ箱から出してみたら、ずしりと重かった。
苦労して開けてみたら硬貨ばかりがジャラジャラと、テーブルの上にいつまでも途切れることなく、流れ出てきた。
最後に残ったのは紙幣ではなく、一枚のメモだった。

「こんこんへ、この間、ロケで海外に行ったとき、麻琴に会いました。まだ当分海外でがんばるそうです。で、その時に、こんこんに会いたいって言ってました。こんこんはこんこんなりに忙しいと思うけど、会いに行ってやってほしいな〜って思いました。これはわたしたちからの餞別です。みんなでジュースを我慢したり、コンビニで無駄遣いするのをやめようって決めて貯金しました。
足りない分は『もちろん』自分で出してください(笑) 美貴より」


わたしは10代の頃と変わらず、今でもホントにお子ちゃまだ。
一人の大人とは孤独に耐えるもの…
でも、このメッセージを見て、わたしは今すぐにでも麻琴に会いたいって思ってる。
そして、今、こんなに、メンバーに会いに行きたいって思ってる。
2006年7月23日に行われた卒業コンサートを思い出す。
あの日、一瞬だけ「わたし、ホントに卒業しちゃっていいの?」って思った。
メンバーの涙を見たからだ。
でもわたしは夢の実現のため、それこそ脇目もふらずにがんばり続けていた。


………!!!
気づいたらわたしの携帯からだった。
メール着信音を、いつの間にか変えなくなっていた。
マメからだった。
「ヤッホーこんこん!久しぶりだね。マヨネーズは、もう食べられるようになった?お互い夢に向かってがんばろうね。でね、麻琴っちゃんに会いに行ってってメンバーから思いっきりお節介しちゃってると思うんだけど、ゴメンね!忙しかったら無理しなくっていいからね。わたしは反対したんだけど、メンバーがこんこんならきっと自分で決められるって言うから。それにさ、やっぱりうちらって『全員そろってモーニング娘。』じゃない?」
毎日のように会っていたメンバーからの、変わらないコトバだった。
不意に涙が流れた。
ゴメン、わたし。そんなに強くないの…。
今だって、ドジをするし、ゴハン屋さんでメニューも決められないんだよ。
涙は止まらないかと思った。


決めた。
今日はメンバー全員に長文のメールをする。
久しぶりだった。
そして麻琴とも、あの日に戻って長電話しよう。
わたしが会いに行くって言ったら、きっとびっくりするだろうな。
何の用事って言われてもいい。
そしたらこの貯金箱を見せてあげたらいい。
それで今日、わたしが教えてもらったことを教えてあげるんだ。
同じ青空の下にいる、わたしの大切な友だちに。
グループを脱けたって、ひとりってワケじゃなかったんだってことを。