「キュリオ」第二部スタート
第12話は予告どおり、第2話の続きになりま〜す。
…
地上に巨大な都市圏を形成したTOKYOにあって、忘れ去られたような片隅。
ここは閉鎖された地下鉄駅だった。
真っ暗な構内にポツンと明かりのついた一角で、この勝負は行われようとしていた。
PK勝負。
対するのは台湾から来たという刑事と、ガッタスのゴレイロ #12紺野あさ美。
眠らない街にも星が瞬き、夜空に浮かぶ月も『すぃ〜すぃ〜』と寝息をたてているような時分。
当然のことながら、観客はいない。
見守るのは、同じモーニング娘。メンバーである藤本美貴と亀井絵里だけだった。
絵里の心は揺れていた。
ロン刑事の前に立ちはだかる紺野を見つめながら、正体の知れない不安に駆られていた。
今日の午後、ミキティに問い詰められてキュリオの秘密を話した。
時間を遡ってきた自分だから、この世界での行動は慎むべきだったかもしれない。
最初のうちは、ほんの好奇心のつもりだった。
けれども、今、自分はここに立っている。
いてもたってもいられなくなっていたのだ。
「紺ちゃん!」
絵里はもう一度、叫んだ。
「アイドルにしておくのはもったいないGKらしいが、さて…」
絵里を一瞥したロン刑事は、誰に言うともなくつぶやいた。
その表情は、この場に不釣り合いなほど、楽しそうだった。
「役者は揃ったな…では、いくぞ!」
その声が、ホイッスル代わりだった。
数歩の助走。
左足で、ボールをこするように蹴り上げる。
すると、ものすごいドライブがかかった。
それは紺野の苦手な、頭上を襲うシュートだった。
紺野はゴールラインから飛び出せない。
(パンチングだ)
これまで何度も自分を守ってくれたキーパーグローブを信じて、握り拳をつくった。
そして膝を深く曲げ、垂直に飛び上がる準備をする。。。
「えっ?!」
そのとき、サッカーボールが予想外の動きをした。
ゴールから大きく逸れるボール。
ミキティの目に、ロン刑事がニヤリとするのが映った。
「亀ちゃん!避けて」
振り向いた絵里に、それを避ける時間はなかった。
「亀ちゃん!」
紺野が駆け寄る。
「亀ちゃん!亀ちゃん!!」
ボールは直撃だった。
絵里は、気を失っていた。
ミキティはロン刑事をにらみつけた。
この刑事、わざと狙ったのだ。
憤然と立ち上がるミキティ。
「実験は開始された」
ロン刑事が静かにそうつぶやいたとき、ミキティの背後でドサッという音がした。
あわてて振り返ると、絵里を抱きかかえていたはずの紺野が、後ろ向きに倒れ込んでいた。
「こんこんっ!どうしたの」
咄嗟に起こった出来事が、信じられなかった。
一体なにが起こったのだというのだ。
なぜ、紺野までもが…
「こんこん!亀ちゃん!ねえ、二人ともっ、しっかりしてよお!」
真夏の夜に、悪夢を見ているような気分だった。
ふらつく頭を抱えて、気づいたときには、もう刑事は立ち去った後だった。
つづけ…