投票! そして長〜いコメント

2006.6.7



men's6さん(id:men-s6)が主催されています「デジタルブックスベストグランプリ」に参加します。
これは、かなり悩みました。
いいなと思える写真は数々あれど、だからこそ数点にしぼるのに悩み、
いわばお気に入りの写真に、順位をつけるのに、さらに数日悩み、
そして今、コメントに悩みながらも投票します。




前置きは、さておき…
第3位は
19番!!!
2点

episode1「学校が衣替えになった日」
 先月は若葉だったと思いながら川沿いの木を見ると、もう葉が濃い緑色に変わっていた。
 こうやって生命あるものの成長が感じられる一方で、気候はまだまださわやかで、過ごしやすい。
 ぼくはこの季節が好きだ。
 その時はまだ、かすかな風が吹いていることに気がついていなかった。
 ぼくが初夏の風に気がついたのは、欄干に腰掛ける彼女の髪がやわらかく揺れているのを見たからだ。
 彼女は、なつふくで初夏の日差しを浴びながら、ぼくが見ていたのと同じ木を見ていた。
 ぼくは、もうひとつのことに、はじめて気がついた。
 日差しに縁取られた彼女は、明るい表情を持っていた。
 あまりにも、うかつだったぼくは、初夏という季節につつまれた彼女に、今日、恋をした。


第2位は
24番!!!!!!
3点

episode2「こんな日に、」
 今日、何度目だろう。
 二人の会話が、また途切れた。
 すると今度は急に彼女はぼくの前に回り、心配そうにぼくを見つめてきた。
 何カ言ワナキャ…
 頭の中は焦ってるはずなのに、出てくる答えはガラクタばかりだった。
 (雨の夜なのに、けっこう薄着だな)
 (ああ、きっと、この間、買ったなつふくを着たかったんだろな)
 (確かに、服装ひとつで、印象って変わるよな)
 ショーウィンドウの前で、人工的な光に照らされた彼女は、まるでこんな時間から踊りに行くギャルのようにも見える。
 けれども、こんな日に、まずほめるのが服装だなんて、鈍な男のセリフだ。
 フリーズ寸前まで頭をフル回転してようやく、スポーツでかっこうよく引き締まった彼女の二の腕に、髪の色がマッチしているのに気がついた。
 「今日…、ヘアメイク、気合い入ってるね」
 表情は変わらなかったが、彼女の答えは、ぼくの期待とは違っていた。
 「ひっどいくせ毛でしょ。ホラ急に梅雨に入っちゃったから、ストパーあててないんだ」
 ぼくはあわてて取りなす言葉を探した。


第1位は
36番!!!!!!!!!
4点

episode3「里帰り」
 大学は入ってみると勉強よりもサークルとバイトの方が楽しくて、本業はどっちなのって実家の両親から言われる日々を送っていた。
 昨日も夜中の列車で帰省した時は、ひどく酔っていて、自分のベッドに直行するつもりだった。
 けれども、うちの実家がある地方は酒豪を育む土地柄って言うのか、そんな時間なのに親戚連中集まって、宴たけなわで。
 だからぼくが、ひどい二日酔い状態で目覚めた時には、日は高く昇っていたけれど、誰もがまだ夢の中で、広い家中が静けさの中だった。
 トイレに行こうと起き上がり、素足にひんやりと心地よい木の廊下を歩く。
 開け放たれた座敷に、山からの風が吹き抜けていた。
 そのうちのひとつの部屋に彼女がいた。
 これから登校するのか、学校のなつふくできちんと正座をして、たたみの上に座っていた。
 おぼろげながら昨夜の親戚大集合の宴会で、初対面同士の簡単なあいさつを交わしたことは思い出した。
 彼女とぼくが、遠〜い遠〜い親戚に当たるのだと説明してくれた親戚ですら、ぼくにとってはどういう関係のおじさんに当たるのかはわからなかった。
 昨夜は制服ではなかったのでわからなかったが、今、見てみるとどうやら高校生のようだ。
 けれども都会の通学電車で見かける女子高生とは、何かが違って見えた。
 そのまま通り過ぎてもよさそうなくらい、おとなしい感じだったが、それも失礼だと思い、声をかけた。
 「昨日は、…いや今日かな、ゴメンね。来るのも遅くなって。大学の友だちと飲んでたから」
 「えっ」
 そう言ってこっちに顔を向けたまま、すぐには話そうとしない。
 見れば見るほどおっとりした娘だなと思った。
 彼女が視線を茶器に戻したのを合図に、ぼくも行こうとした。
 その時、彼女が、不意に言った。
 「いいなあ、大学」
 彼女は受験生だった。
 大学に夢を持っていた。
 彼女が都会の通学電車で見かける女子高生と、違って見えた理由が、今、わかった。


以上の3枚です。
men's6さん、おまけのはずのコメントが無駄に長くて申し訳ありません。
よろしくお願いします。